経過報告

医学生 ゲーマー 双極性障害

天気の子とテロリストの論理

天気の子の概要

人柱となることで特殊能力を得た少女、少女は売春に手を出す一歩手前まで追い詰められているが特殊能力によって祈祷師となって自分の生きがいを感じる いざ人柱になって死んでいくことによって世界に平和が訪れる しかし当然ながら誰からも感謝されず悲しんでいるのは弟と主人公だけ 主人公はその状況に強く憤り 「青空よりも陽菜がいい」といって空の世界から人柱になった陽菜を取り戻すと 世界は雷雨に包まれ3年間雨は降り続けた 3年後主人公は見事大学に合格し陽菜は女子高生として生きている

 

このストーリーのずるいポイントがあって

人柱になって天気の子である陽菜が得たメリットについて整合性が合わないことである。謝礼で10万円もらっている描写もあるように祈祷で得た金銭と、生活面での向上がいまいち噛み合わないのである 予約がひっきりなしに来て顧客も大きくなっていき短期間に結構な頻度でやっているようなのに主人公がちょっとした服を買ったぐらいで最初痛々しいぐらいの貧乏飯をめちゃめちゃおいしそうに食べるシーンから全然向上しているように見えない、おそらく生活の質は上がったのだろうがそれを確認できるシーンはないはずである。それにあんなに金を稼いでおきながら安物のプレゼントを買うのもおかしいのではないだろうか ラブホテルでの最後の晩餐もあくまで人柱になって稼いだ金銭ではなく退職金としてもらったお金から出されているんだろうなという感じである 人柱になったメリットをちゃんと描くと死んでもまあ仕方ないよねこれだけいい思いで来たんだしという風になるのでやめたのでしょう

 

天気の子とテロリズム

天気の子は明らかに世界を救う力があるという風に描写されています。天気の子の死=主人公たちが生きづらく感じている現状の世界の平和 天気の子が死なないこと=現状の世界を破壊することです しかしそのことを知っているのはごく限られた人たちです そして人知れず犠牲になることになっているのは主人公の愛の対象です 世界で一番好きな人のためなら世界が壊れてしまってもかまわない「世界は最初から狂っているのだから」 これはかなりテロリスト的な思想ではないでしょうか 3年間雨が続くことで死亡者も出るはずです 天気の子の命を救うことによってそれ以上に多くの人たちの命が失われます、 そして天気の子自身は特殊能力がなければ体を売って生活するしかない非常に困窮した状態です 主人公は人知れず世界を救って、地獄のような世界から脱出できたはずの陽菜を自分が好きだから、生きていてほしいからという身勝手な理由で大量の人を殺して中学校すら通えているのか定かではない、おそらく通えていない状況に陽菜を引きずり戻します。愛にできることがあるならきっとそうじゃないと僕は思います。

 

めちゃめちゃ寛容なテロの被害者たち

水没によって一軒家を失うおばあちゃん、オフィスを失う社長もこのテロの被害者に分類されるはずですが恨み言ひとつ言わず 社長はなぜかビジネスがうまくいっていて お前のせいじゃないみたいなことを言い出します いや、絶対お前のせいなんだ、そうじゃないとこの物語は成り立たないんだ 本来被害者として先頭に立つべき人たちがめちゃめちゃ寛容なのでテロ行為に対する罪悪感を本人は自覚しておきながら 僕たちは大丈夫だ!といって身勝手な理論を展開します。

 

めちゃめちゃ元気な世界

この描写については結構納得いきます どんな災害に見舞われても人々はこれまでも力強く生きてきたし、これからもきっとそうなんだという風な感じです 水没しても人々が状況に適応するであろうというのは間違いないです しかしそれは適応できない人がみんな死ぬからでもあります。関係者がだれ一人死なないというのもシリアスな内容の癖に能天気だなという部分です。

 

何事もなかったのように幸せになる主人公とその他関係者

数多くの犯罪を犯しながらも農工大に現役合格して楽しく大学生活を満喫しようとする主人公、中学校も通えなかったのになぜか女子高生の服を着ている陽菜 どうしてそうなるのか 世界が崩壊するからこそ生き残った人たちが豊かになるということなのでしょうか?? しかし今の状態で東京の土地が例えば33%分しか残りませんという世界を想像すると真っ先に立場が怪しくなるのは社会的弱者の陽菜ではないでしょうか ここが最もお気楽だなと思った点です 児童買春まで重苦しい話を持ち出したにもかかわらずなんで女子高生やれてるんだよという話ですね 世界が変わった後があまりにお気楽すぎるなということについて考えていると テロリストたちが死後は72人の処女が君を迎えてくれるという風に教えられるというような情報を思い出しました  つまりこの映画はごく限られた人たちのために世界を破壊することでなぜか知らないけどそれをした人たちはみんな幸せになる、世界を破壊しても問題ないなぜなら「世界はもともと狂っているから」という風に読み取れてしまってなんだかテロっぽい考え方、ストーリーだなと 世界が間違ってるから世界に害をなしても問題ないという風なメッセージ性を感じ取ってしまって 全然同意できないな~と思ってたので全然感動できなかったんだということが4時間ぐらい考えたらわかりました 全然同意はできないけど面白い映画ではあったので満足です